このコーナーは私がふだん店番をしていて、実際にお客さんに聞かれたこと、
又、お茶の業界でこんなことが起きているなどちょっと書いてみます。
(分からない言い回しなどがあればどんどん指摘して下さい。)

 

 

2003.09.12 第1回「ブレンド考」

「お茶をブレンドしている」というととかく悪いイメージで語られるようです。
お茶屋が儲けるためにごまかしているなんて、お思いですか?
値段を決める上でそういう調整をすることは否定しません。商売ですからね。
でも、いい加減な値段を付ければお客さんはちゃんと分かってますから、消費者が買いやすく、値打が
あるようにしないとどんどんお客さんが離れていくのは物の道理です。

なにか余計なものが混ぜられているとか、そう考えるかたもいらっしゃるのでは?
添加物(玄米、金箔等)を投入する場合は、その旨を表示することが義務付けられています。
又、摘んできた生の葉っぱを加工するときになんらかの細工をすること(着色剤や着味剤等の添加など)
を静岡県では条例で禁止しており、他府県でも表示が義務付けられていますが、もちろんこんな小細工は
論外です。本来そのお茶が持つものを変えてしまうんですから。
使用されるものが食品添加物として認可されているとしても、けして行われてはならないことです。

そんなこと(着色や味付け)をしなくてもお茶をおいしくする方法があるんです。

それは、「 いくつかのお茶をブレンドする」ということです。

お茶は農産物であり、採れた場所が同じ地方でも、、その土地の気象条件などの環境や、肥料や散水など
も影響しますし、摘み取りが早すぎたり遅すぎるといった摘採時期を誤ったりしてもぜんぜん違うものが
出来てしまいます。味、香り、注いだ時のお茶の色などが全て揃っているお茶はなかなかできません。
「このお茶は香りはいいが、味が薄い」とか、「この旨味はなんとか活かしたいがちょっと水色がもう少し
緑ならいいな〜」なんてことが当たり前に起こるわけです。そこで、お茶屋の出番です。
なるべく消費者の方々に「あ〜うまい!」と言ってもらい為に無数にあるサンプルを味見して、これとこれ
を合わせてやればおいしいお茶になる、とブレンドするわけです。

又、Aというお茶屋さんとBというお茶屋さんがもし仮に、値段が一緒で同じ名前がついてても同じ品物
を売っているということはまずありません。
お茶屋さんの好み、仕入れ先、そのお店のお客さんの好みなどいろいろ要素はありますが、そのお店独自の
「ブレンド」がされているからです。
(チェーン店等の場合は一括仕入れで同じものが店頭に並ぶということはあります)

さて、たくさんあるお茶屋さんの中からどうやって自分の好みのお茶を見つけるか?
なにより怖がらずに(笑)まずは近所のお茶屋さんに行ってみましょう。
まずはご自分の予算を(100g¥500とか)決めて1杯飲ませてもらいましょう。
やな顔されたり、試飲が出来ないなんてのはまずだめですね。
(スーパーなどのパック詰めしかないところはちょっと無理でしょうけど...)
いろいろ聞くのもいいですね。売っているお茶に関してはそのお店の人が一番知っているはずですから答え
られないなんていうのはどうも...
ん、?気の効いたレストランを探すみたいですね、なんだか。お茶屋さんの情報はあまりタウン誌などにも
載ってないのであなたしかしらない(ウチのような)隠れた穴場が見つかるかも知れませんよ。(笑)
ブレンドの話がいつの間にかお茶屋さん選びになってしまいまいました。

このように「お茶のブレンド」は多くの場合お茶をおいしくするために行われているということを知って
いただけましたでしょうか?
ちなみにブレンドすることを専門用語で「合組みする(ごうぐみする)」といいます。

2003.09.19 「最近のお茶は香りが薄い?」

さっそく掲示板のネタいただきました〜。(笑)そう、古くからのお客さんから時々言われます。
特に 「原因はこれだ!」ってのは決められないんないんでしょうが、考えられることをいくつか。

まずは肥料の与え過ぎという説。
トマトやバラの花など他の植物に人工的に肥料をあたえるとみかけは大きく色も美しくなるかわりに、
香りが薄くなるという話がありまして、これが、お茶にもあてはまるんじゃないかというんです。
人間でいうところの肥満の状態でしょうか?
必要な養分を土中からどんどん吸収できるということは根をどーんと張る必要はないし、光合成など
自分でしなくても間に合っちゃう。植物も手を抜いてるというか、楽な方へ楽な方へと向かうのはどの
世界でもあまり歓迎されることではないんでしょうね。

それから、お茶の葉に熱を加えすぎるという説。
畑からお茶の葉を摘んで来て加工するのにまず最初にすることは「蒸す」 ( *注)という工程です。
それから熱を加えながら揉んで乾かしていくんですが、現在関東地方を中心に市場に出回っているお茶は
「深むし茶」と呼ばれる製法が主流で、昔のお茶よりも2〜3倍長く蒸します。渋みが抑えられ、味が濃く
なる反面、香りはどうしても犠牲になってしまいます。お茶の香りは本来葉っぱが持つ青臭みなどの揮発性
の香りなんですが、長く蒸すとそれが飛んでいってしまうんですね。

機械も大型化しておりコンピューターで管理されています。これがけっこうくせもので大きな機械はある
程度の量を一度に加工していく必要があり、前回の項でお話したとおり、同じ地方でもいくつかの畑の葉が
投入されれば毎回違う製品に仕上がるはずで、それに応じた蒸し時間や乾燥する温度があるわけですし、昔
からの経験で調節するというよりも多くの加工場は工業化という効率がどうも優先されているように思えて
ならないんですよね...
長く蒸して、機械まかせの温度もやや上がりぎみ。こんなところも影響があるのではないでしょうか?

もちろん昔通りの蒸し時間で作っているお茶もちゃんとあります。お茶袋の表示 が「名称 煎茶」と書いて
あれば基本的には普通蒸し、「名称 深むし茶」とあれば蒸しの時間をかけたお茶です。

( *注)
お茶の葉は摘んで来てそのまま置いておくと葉についている酸化酵素で発酵していきます。これに火を入れ
て発酵を止め、いわゆる日本の緑茶に加工します。
この工程を時間をおいて半分ぐらい発酵させるとウーロン茶、完全に発酵させたものが紅茶になります。
一部地域では蒸さずに、熱した釜で炒る方法もあります。これも原理は同じです。

お茶にもブランド信仰

今年の夏の気候不順のためお米が不足しているそうで。なかでもコシヒカリなどのブランド米が盗まれたり
ですとか、産地や銘柄を偽って販売していた業者が摘発された話題が新聞を騒がせています。
お茶の業界にも同じようなことが起きる気配が。

よくパッケージに「○○茶」と表示されてますが、この○○の部分には皆さんがよく御存じの産地の名前が
入ると思います。だいたい4ケ所くらい思い当たります?
ところでお茶のブレンドは価格安定供給の為にも必要なことですし、なによりおいしいお茶にするための
技術だということは前にも述べました。一部他県産のお茶を合わせることも当然ありうることです。
そこで業界でもお米同様お茶も農作物ですので、その産地や生産履歴を公開しましょうという流れになって
きています。さて、その決まりなんですが「?」なんですよ。

「ブランドとして冠する県産地のものが何割以上含まれていれば『○○茶』と表示してよい」ということを
産地の業者間の自主基準で決め、来年から施行されるようです。
(このことは全国統一でなく産地によって割合が違います)

又、△△県のお茶を○○県に持ち込んで加工しても○○茶と表示出来るんだそうです。
これ、どう思います?同じ県産地ばかりでまとまれば何も問題はないわけですが当然、消費者側は100%
その産地であるからこそ「○○茶」であって欲しいですよね。
となるとブレンドにおいての表示とはどこが何割でここが何割ブレンドしてますという表示もきっちりやる
べきだと思うんですよ。

「○○茶」というブランドで買っている消費者にどう説明するんでしょうか?
「○○が半分以上含まれてますから、『○○茶』です。」ですか?
それとも黙って「○○茶です」って販売するんですかね?
私なんかは恥ずかしくてそんな売り方できませんよ。
だったら、本当にそのブランドを守るために産地が一体となって「○○茶」は○○100パーセントのみ
が当然で、他産地をブレンドした場合はきっちり表示して、ネーミングは「○○茶ブレンド」などと別に
するのが真っ当な考えじゃないんですかね。
その方が本来のブランドとしての信用も保たれるし、逆に考えると今まであまり名の知られてなかった産地
も一気に表舞台に立つチャンスだと思うんですよ。
いろいろお茶を見ていると、同じ県内でも場所が沢山ありますし、狭い範囲の場所で収穫量も多くないんです
が、応援したくなるいいお茶作るところが結構あるんですよ。
そんな小手先のことしていたらお客さんに信用されませんよ。
私などはおいしければどこをどう合わせてもいいんじゃないの?とは思ってるんですが、その商品についての
情報を知りたいという声は当然あります。たとえばお客さまがウチのお茶を召し上がって、
「どことどこのお茶を合わせるとこの味になるんですか?」
と聞かれれば当然答えられるます。(自分とこでブレンドしているんですからね)
この際ウチの商品は全部産地表示を公開しようと思ってます。

ブランド力もひとつの商品選びの有力な情報ですが、やはり、売る側も正直に情報公開をしておいて、
「○○も良いですがこれもなかなかです。」と言えるような商品揃えをし、買う側もいろいろ試してやはり
○○が一番ならそれもよし、ひょっとしたらいままで○○だったけれどもっといいものを見つけたという
ことにもなるかも知れませんよね。

お茶だけでなく、いろんなモノに対してもみんなが買っているとか、これを持ってないと世間並じゃあない
なんていう狭い考えは捨てて自分で本当に納得するものを探しに冒険するのもいいんじゃあないでしょうか?

 

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